きゅうりを大切に育てていると、「葉っぱはあんなに青々として元気なのに、なぜか肝心な花が全然咲かない…」と悩んでしまうこと、家庭菜園をやっていると本当によくありますよね。僕も最初の頃は毎日のようにプランターを覗き込んではため息をついていました。

僕が初めてプランターできゅうりを育てた時も、まさにこの状態でした。ツルばかりがどんどん伸びて葉ばかり茂り、花が全然見当たりませんでした。「きっと栄養が足りないんだ!」と焦って肥料(それも窒素分の多いもの)をどんどん追肥したのですがまったく改善せず、後になって本当の原因は「ベランダ特有の日照不足」と「肥料のバランスが完全に崩れていたこと」だったと気づいた苦い経験があります。きゅうりからのSOSサインを完全に見逃していたんですね。

この記事では、「きゅうりの花が咲かない」と悩んでいるあなたに向けて、よくある表面的なノウハウだけでなく、植物の生理学的なメカニズムに基づいた本当の原因と、今すぐご自宅でできる具体的な対処法を極限まで絞り込んで解説します。余計な情報は省き、読んだその日からすぐにお庭やベランダで実践できて、悩みの解決に直結するポイントだけを網羅的にまとめました。最後まで読めば、きっとあなたのきゅうりも可愛い花を咲かせてくれるはずですよ!

きゅうりの花が咲かない理由と解決策を解説するガイドの表紙。葉っぱは元気なのに花がつかない悩みについて。

きゅうりの花が咲かない主な原因

きゅうりの花が咲かない場合、決してあなたの愛情が足りないわけではありません。多くは栽培環境や日々のお手入れのちょっとしたズレ、あるいは植物の成長ステージの勘違いが原因です。まずは、ご自身の栽培環境に当てはまるものがないか、以下の5つのポイントからじっくりチェックしてみてください。

きゅうりの花が咲かない原因は愛情不足ではなく、植物の「自分の命を守る」という生存本能によるものだという解説。

1. 日照不足と風通しの悪さ

きゅうりという野菜はもともとインドのヒマラヤ山麓周辺が原産と言われており、お日様の光をたっぷりと浴びることで元気に育つ植物です。僕も経験があるのですが、「ベランダの明るい日陰に置いているから大丈夫だろう」と油断していると、実は植物にとっては全く光量が足りていなかったりするんですよね。

光合成がしっかりできないと、植物は自分でごはん(炭水化物などのエネルギー)を作ることができません。花芽(はなめ)を形成し、それを咲かせるのにはものすごく大きなエネルギーが必要なので、光が足りないと「今は花を咲かせて子孫を残している場合じゃない、まずは茎を伸ばして少しでも光を探さなきゃ!」と株が判断してしまいます。結果として、ヒョロヒョロと間延びした「徒長(とちょう)」と呼ばれる状態になってしまうんです。

ここで一つ重要なデータがあります。きゅうりは太陽の光が大好きですが、光合成は主に午前中に行われ、なんと1日の同化産物量(生産量)の60〜70%が午前中に作られると言われているほどです(出典:農林水産省『第1節 きゅうり』)。つまり、午後から西日がガンガン当たる場所よりも、朝日がしっかり当たる場所の方がきゅうりにとっては圧倒的に嬉しい環境というわけですね。サカタのタネやタキイ種苗といった種苗メーカーの栽培ガイドラインでも、きゅうりは「1日7〜8時間以上の十分な日照が必要」と推奨されています。

また、日照と同じくらい気をつけたいのが「風通しの悪さ」です。風が通らないと、葉っぱの周囲に湿気が淀んでしまい、根っこから水を吸い上げる力(蒸散作用)がガクッと弱まってしまいます。水が吸えないと、一緒に土の中の栄養も吸い上げられなくなるので、いくら肥料をあげても肥料不足と同じような状態に陥るんです。さらに、うどんこ病やべと病といった、カビが原因の厄介な病気も発生しやすくなるため、葉っぱが密集しすぎないように適度に風の通り道を作ってあげることが非常に重要かなと思います。

植物からの助けての合図と解決策。葉が密集している、巨大で濃い色、昼間にしおれるといった症状と、日照、肥料、水やりによる対策。

2. 窒素過多(つるボケ)による栄養の偏り

実は、家庭菜園できゅうりの花が咲かない原因として、僕が個人的に一番多いんじゃないかと思っているのが、この「窒素過多(つるボケ)」です。きゅうりが可愛くて、よかれと思って毎日せっせと肥料をたくさんあげている愛情深い人ほど、無意識のうちに陥りやすい落とし穴なんですよね。

肥料には大きく分けて「窒素(チッソ)」「リン酸」「カリウム」という三大要素があります。このうち、窒素は「葉肥(はごえ)」と呼ばれ、葉や茎を大きく青々と育てる働きがあります。しかし、この窒素が土の中に多すぎると、植物は「栄養がたっぷりあるから、今は花を咲かせて種を残さなくても、もっと自分の葉っぱを大きくして成長できるぞ!」と勘違いしてしまい、生殖成長(花や実を作ること)を後回しにして、栄養成長(葉や茎を伸ばすこと)ばかりを続けてしまいます。これを園芸用語で「つるボケ」と呼びます。

葉を育てる栄養が多すぎて、花を咲かせる栄養が足りていない状態を示す天秤のイラスト。

知っておきたい肥料の三大要素と役割

要素名(記号)通称主な役割ときゅうりへの影響
窒素(N)葉肥(はごえ)葉や茎を大きくする。多すぎるとつるボケになり花が咲かなくなる。
リン酸(P)実肥(みごえ)花付きや実付きを良くする。花が咲かない時に一番補いたい栄養素。
カリウム(K)根肥(ねごえ)根を丈夫にし、暑さや病気への抵抗力を高める。夏場のバテ防止に必須。

つるボケになっているかどうかを見分けるのは意外と簡単です。もしあなたのきゅうりの葉っぱが「大人の手のひらよりもはるかに巨大」で、色が「黒っぽく見えるほど濃い緑色」をしていて、表面がボコボコと波打っているなら、ほぼ間違いなくつるボケ状態です。この状態の時は、いくら待っても雄花ばかりで雌花がつかなかったり、そもそも花芽自体ができなかったりするので、早急な対策が必要になります。

3. 水不足による成長ストップ

きゅうりという言葉は「黄瓜」から来ているとも言われますが、その果実の成分の90%以上が水分でできているほど、とにかく大量の水を欲しがるお野菜です。しかし、厄介なことにきゅうりの根っこは、トマトやナスのようなどっしりとした直根性(下に深く伸びる根)ではなく、地表から10〜20cmくらいの浅い部分に横に広く張る「浅根性(せんこんせい)」という性質を持っています。

根が地表近くに浅く張るということは、夏の強い日差しなどで土の表面が乾くと、あっという間にダイレクトに水切れを起こしてしまうということです。水分が足りないと、株の中の細胞に水が行き渡らず(膨圧が下がり)、葉っぱがダランとしおれてしまいます。

さらに深刻なのは、水が不足すると植物は体内の水分が空気中に逃げるのを防ぐため、葉の裏にある「気孔(きこう)」という穴をキュッと閉じてしまうことです。気孔が閉じると、光合成に必要な二酸化炭素を吸い込むことができなくなり、光合成が完全にストップしてしまいます。光合成が止まれば当然エネルギーが作れなくなるため、株は命を守ることを最優先にするサバイバルモードに突入します。そんな緊急事態に花を咲かせたり実をつけたりする余裕は全くないので、結果として成長がピタッと止まり、花が咲かなくなってしまうんですね。水やりはきゅうりの命綱と言っても過言ではありません。

4. 気温が高すぎる(猛暑のストレス)

きゅうりはスイカやナスと同じ夏野菜の代表格なので、「暑ければ暑いほど元気に育つんでしょ?」と誤解されがちですが、実はそんなことはありません。先ほども触れたように原産地がヒマラヤの山麓など比較的冷涼な地域にルーツを持つため、本当に心地よいと感じる生育適温は25℃〜28℃くらいなんです。つまり、日本の真夏のように連日35℃を超えるような極端な猛暑は、きゅうりにとっては過酷なストレス環境と言えます。

気温が30℃を大きく超えてくると、株が夏バテを起こしてしまい、成長のバランスが崩れます。特に影響が出やすいのが花粉の質です。高温になりすぎると雄花の花粉の機能が低下したり、せっかく咲いた雌花が受粉能力を失ってポロッと落ちてしまうことがよくあります。

夜間の温度(熱帯夜)も花付きに直結する

さらに注意したいのが「夜の温度」です。植物は昼間に光合成で作った栄養(糖分)を、夜の間に涼しい環境でゆっくりと体の各部分(花や実)に送り届けます。しかし、夜の気温が25℃を下回らないような熱帯夜が続くと、植物は人間と同じように寝苦しくて「呼吸」ばかりを激しく行ってしまいます。
呼吸が激しくなると、せっかく昼間に作った貴重な栄養をどんどん消費して燃やしてしまうんです。これを「呼吸消耗」と呼びます。夜間に栄養を使い果たしてしまえば、翌朝に花を咲かせるための貯金がゼロになってしまうため、真夏の暑すぎる環境下ではどうしても花が咲きにくくなるというメカニズムなんですね。

5. 品種の違いや、まだ株が若いだけの場合も

意外と見落としがちなのが、「そもそもそういう品種を育てている」というケースと、「まだ花を咲かせる年齢に達していない」というケースです。

きゅうりには本当にたくさんの品種があり、花のつき方によって大きくいくつかのタイプに分かれます。例えば、主枝(一番太い親づる)には雌花がほとんどつかず、そこから脇に出た側枝(子づるや孫づる)にたくさん雌花がつく「飛び成り型(側枝型)」というタイプがあります。もしあなたがこの品種を育てていて、後述する「摘心(てきしん)」を行わずに親づるばかりをずっと伸ばし続けていると、いつまで経っても雌花が咲かないという状況になってしまいます。

また、ホームセンターで苗を買ってきて定植したばかりの時期は、株はまだ「栄養成長期」という自分の根や茎、葉をしっかりと大きくするためのステージにいます。人間で言えばまだ小学生くらいの状態ですね。この時期は自分の体を大きくすることを最優先にするため、花が咲かないのはごく自然なことです。大体植え付けから3〜4週間ほど経ち、本葉が10枚以上しっかり展開して株に体力がついてくると、自然と「生殖成長期」にスイッチが切り替わり、花芽をつけ始めます。「全然花が咲かない!」と焦らずに、最初の1ヶ月は株を育てることに集中してあげると良いかなと思います。

花が咲かない時の具体的な対処法

原因に心当たりがあったら、次は具体的なアクションです。メカニズムが分かれば対策はとてもシンプルになります。明日からすぐに実践できる、悩みを解決するための4つの対処法を詳しく紹介します。

置き場所を見直し、日当たりを確保する

日照不足が疑われる場合は、とにもかくにも「いかに光を当ててあげるか」が勝負になります。我が家でもベランダでプランター栽培をしていますが、梅雨時期にどんよりとした日照不足が続くとパッタリと花が止まり、咲いたとしても雄花ばかりになったことがあります。その時、思い切ってプランターを一番日の当たるベランダの南向きの特等席へ移動したところ、2週間ほどでポツポツと雌花が増え始め、見事に復活しました。

ベランダや限られたスペースでの工夫

ベランダ栽培の場合、手すりやコンクリートの壁が影になってしまい、実は株元に全く光が当たっていないことがよくあります。そうした場合は、プランターの下にレンガや専用のフラワースタンドを置いて少し高さを出し、日光が当たる位置まで持ち上げてあげるだけでも劇的に日当たりが改善します。

もしプランターが大きすぎて移動が難しい場合や、地植えで場所を変えられない場合は、周囲の雑草をきれいに抜いたり、影になっている他の庭木の枝を少し払ってあげる(剪定する)だけでも効果があります。また、園芸用のアルミ反射シートなどを株の裏側に敷いて、下から光を反射させて葉っぱの裏側に当ててあげるという裏技も、光合成を促進する上でとても有効ですよ。

朝夕の涼しい時間にたっぷり水やりをする

きゅうり栽培において、水やりのテクニックは収穫量を左右する最も重要なポイントです。水やりは「土の表面が乾いたら、鉢底から水が勢いよく流れ出るまでたっぷりと与える」のが絶対的な基本ルールです。

なぜ「鉢底から流れ出るまで」必要なのか?

「毎日コップ1杯の水をあげています」という方がたまにいらっしゃいますが、これでは表面が濡れるだけで、肝心の根っこの先端まで水が届きません。また、鉢底から水が流れ出るほどの量をあげるのには重要な意味があります。水が土の中を下へ下へと通り抜ける時、土の中に溜まった古いガス(根が呼吸して出した二酸化炭素など)を押し出し、同時に新鮮な酸素を土の中に引き込んでくれるんです。つまり、正しい水やりは根っこの「深呼吸」をさせてあげる作業でもあるんですね。

水やりは根っこの深呼吸。土の中に新鮮な酸素を届けるため、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと与えることの重要性。

タイミングとしては、真夏の強い日差しが当たる時間帯は避け、朝や夕方の涼しい時間に水やりするのが絶対におすすめです。日中のカンカン照りの時間に水をあげてしまうと、太陽の熱で土の中の水分がお湯のように熱くなり(40℃を超えることもあります)、根っこが茹で上がって一発で枯れてしまう危険性があります。土の量に限りがあるプランター栽培では特に水切れしやすいので、真夏は朝の出勤前と、夕方涼しくなってからの1日2回、こまめに様子を見てたっぷりとあげてくださいね。

肥料のバランスを整える(追肥のコツ)

もしあなたのきゅうりが、葉っぱばかりが異常に大きくて色が濃い「つるボケ」の疑いがある場合は、勇気を持って「しばらく肥料(特に窒素)をお休みして様子を見る」ことが最大の対策になります。愛情の押し売りを一旦ストップするわけですね。

数日から1週間ほど水やりだけで管理し、新しい葉っぱの大きさが少し落ち着いてきたり、色が少し薄くなってきたら、今度は「リン酸(P)」や「カリウム(K)」がしっかり含まれた肥料を選んで追肥しましょう。液体肥料の裏面を見ると「N-P-K = 5-10-5」のように成分比率が書いてあるので、真ん中の数字(リン酸)が大きい「花を咲かせるための肥料」を選んであげると、驚くほど花付きが良くなります。

ただし、日照不足や水切れが根本的な原因の場合は、いくら魔法のような肥料を追加しても全く改善しません。植物は光と水がないと肥料を消化できないからです。まずはここまでお話しした「光と水の栽培環境」を整えることが何よりも最優先です。

そのうえで、「なんだかうちのプランターの土、ガチガチに固くて水はけも悪いし、土の状態自体が悪いのかも…」と感じる場合は、肥料というよりも「土壌環境そのものをサポートする資材」を活用する方法もあります。
例えば、国産の有機液体肥料『生きてる肥料』などは、ただ栄養を与えるだけでなく、菌根菌(きんこんきん)という自然界の有用な菌が植物の根に共生し、根の張りを助けてくれます。根がしっかり張れば、植物が自力で水や養分を力強く吸収する力が底上げされます。植物の調子がどうしても上がらない時や、根を元気にしたい時のサポートとして、家庭菜園でも非常に使いやすいアイテムですよ。
土の力を引き出す、菌根菌のチカラ【生きてる肥料】

摘心(てきしん)を行って栄養を分散させる

きゅうり栽培のハイライトとも言えるのが「摘心(てきしん)」という作業です。これは、伸びていくツルの先端(生長点)をハサミでチョキンと切り取ってしまうお手入れのことです。初めての方は「せっかく伸びたのに切るなんてもったいない!」と思うかもしれませんが、花を咲かせるためにはこれがものすごく重要な役割を果たします。

頂芽優勢(ちょうがゆうせい)を崩して花を咲かせる

植物には「頂芽優勢」という性質があります。これは、一番上にある先端の芽(頂芽)が優先的に成長し、そこから下にある脇芽(側芽)の成長をホルモンによって抑え込むという仕組みです。つまり、メインの親づるをずっと放置していると、親づるばかりが果てしなく伸び続け、横から出るはずの「子づる」や「孫づる」がいつまで経っても伸びてきません。

きゅうりの多くの品種は、「親づるには雄花ばかりが咲き、横から出る子づるや孫づるに雌花がたくさんつく」という性質を持っています。
そのため、親づるが支柱のてっぺん(大体自分の背丈か160cm〜180cmくらい)まで伸びたタイミングで、先端をバッサリと摘心します。すると、上へ伸びることを止められたホルモンバランスが変化し、「行き場を失った栄養」が一気に横方向へ分散されます。結果として、脇から子づるが元気よくニョキニョキと生えてきて、そこに待望の雌花が次々と咲き乱れるようになるんです。

ただし、最近の家庭菜園向け品種やミニきゅうりの中には「摘心不要(親づるにもどんどん雌花がつくタイプ)」のものも多く販売されています。間違えて摘心してしまうと逆に収穫量が減ってしまうこともあるため、まずは苗を買った時のラベルを見て、ご自身が育てている品種が「摘心が必要なタイプかどうか」をしっかり確認してみてくださいね。

先端を切って栄養を横に分ける摘心の解説。親づるの先端を切ることで、子づるに栄養を行き渡らせる方法。

雄花ばかり咲く時はどうする?

「葉っぱも元気だし、花も咲き始めた!…と思ったら、よく見ると実がならない雄花ばっかりじゃないか!」とガッカリしたり、焦ったりする方も多いですよね。でも、実はこれ、きゅうりの栽培初期においては全く異常なことではなく、むしろ植物として大正解の自然なサイクルなんです。

植物の賢い生存戦略

きゅうりをはじめとするウリ科の植物は、定植して間もない成長の初期段階では、あえて「雄花」を先行して大量に咲かせる傾向があります。これには理由があって、雌花(実をつける花)を咲かせて果実を大きく育てるのには、莫大なエネルギーが必要になります。まだ株自体が小さくて体力がないうちに雌花を咲かせてしまうと、実を育てることに体力を奪われてしまい、株全体が疲弊して枯れてしまうリスクがあるんですね。

そこで植物は賢く計算して、「まずは作るエネルギーが少なくて済む雄花をたくさん咲かせよう。そうしてミツバチなどの虫たちに『ここに花があるよ!』とアピールして集める習慣をつけておこう。そして株の葉っぱが増えて体力が十分についた頃を見計らって、満を持して雌花を咲かせよう」という戦略をとっているんです。

雄花はむしり取らなくてOK

「実にならないなら、栄養の無駄だから雄花はむしり取ったほうがいいの?」と質問されることがありますが、無理にむしり取る必要はありません。取ったからといってその分の栄養が魔法のように雌花に回って急に咲くわけではなく、逆にハサミや手で傷つけることで、そこから病原菌が入ったり、株にストレスを与えてしまうデメリットの方が大きいです。

雄花ばかり咲いている時期は「今はまだ株が体力を蓄えている準備期間なんだな」と優しく見守り、水やりと追肥を適切に行いながら、株全体が大きく成長するのを気長に待ちましょう。大体、草丈が1メートルを超えてくる頃には、自然と雌花が混じって咲き始めるはずですよ。

実がならない雄花ばかり咲くのは「大正解」。株が小さいうちに虫を呼び寄せる準備をしている賢い戦略であるという説明。

花は咲くのに実がならない時は?

「ついに雌花(根元に小さなきゅうりの膨らみがある花)が咲いた!これで収穫できる!」と喜んだのも束の間、花がしぼんだ後にその小さなきゅうりが全く大きくならず、黄色くなってポロッと落ちてしまう現象。これを「落下」や「流果(りゅうか)」と呼びますが、これも本当によくある悩みです。

株のエネルギー不足が一番の原因

雌花が咲いたのに実が大きくならない最大の理由は、シンプルに「株のエネルギー不足(体力不足)」です。きゅうりの実は、花が咲いてからわずか1週間足らずでスーパーで売っているような15cm〜20cmの大きさに急成長します。この時、尋常じゃない量の水と栄養を必要とします。

もしそのタイミングで、土が極度に乾燥していたり、肥料が切れていたり、あるいは日照不足で光合成が十分にできていないと、株は「今の自分の体力では、この実を最後まで育て上げることは不可能だ」と冷静に判断し、自らその実を切り捨てて落としてしまうんです。防衛本能ですね。このサインが出た時は、すぐに「追肥」を行い、朝夕の「こまめな水やり」を徹底して、株の体力を急速に回復させてあげることが重要になります。

受粉は必要?単為結果性について

「実が落ちるのは、虫がいなくて受粉できていないからでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、現在のきゅうりの多くの品種は「単為結果性(たんいけっかせい)」といって、なんと受粉のプロセスを経なくても、自然に果実が大きくなるという非常に特殊でありがたい性質を持っています。そのため、トマトやカボチャなどのように、人間がわざわざ筆や綿棒を使って人工授粉をしてあげる必要は基本的にはありません。

ただ、長雨で日照ゼロの日が何日も続いたり、気温が低すぎるなど、あまりにも悪条件が重なって株の「自然に実を太らせるパワー(単為結果の力)」すら弱ってしまっている非常事態の時だけは例外です。どうしても実が落ちてしまって困るという場合は、朝の涼しいうちに元気な雄花を摘み取り、花びらを取ってむき出しにした花粉(おしべ)を、雌花の先端(めしべ)にポンポンと軽くこすりつけてあげる「人工授粉」を行うことで、結実をサポートできるケースもあります。最後のひと押しとして試してみてください。

よくある質問

ここでは、僕が普段家庭菜園のアドバイスをする中で、読者の皆さんからよくいただくきゅうり栽培の疑問について、Q&A形式で詳しくお答えしていきます。

プランター栽培だと花が咲きにくいですか?

結論から言うと、プランターでも十分立派に育ちますし、花もたくさん咲きます。僕自身もずっとプランターできゅうりを育てて美味しい実を収穫していますから安心してください。
ただし、地植え(畑)と比べると、プランター栽培ならではの「難しさ」があるのは事実です。

一番の違いは「土の量(根の張れるスペース)」が圧倒的に限られていることです。土の量が少ないということは、保っておける水分量も肥料分も少ないということ。真夏になれば、朝にたっぷり水をあげても夕方にはカラカラになってしまうことも珍しくありません。また、水をあげるたびに鉢底から肥料分が流れ出てしまうため、地植えよりも「肥料切れ」を起こすスピードが早いです。

つまり、プランター栽培で花をしっかり咲かせるためには、地植え以上に「毎日のこまめな観察と、水やり・追肥の細やかな管理」が成功のコツになります。できるだけ深さがあり、土がたっぷり入る大型のプランター(最低でも容量15リットル以上、できれば20〜30リットル)を選ぶだけでも、水切れのリスクが激減してグッと育てやすくなりますよ。

雌花が咲かないのは異常ですか?

こちらも本当によくある質問ですが、栽培初期において雌花が咲かないのは全く異常ではありません。
「雄花ばかり咲く時はどうする?」のセクションでも詳しくお話しした通り、きゅうりの株は定植してからしばらくの間、自分の根を張り、葉を増やし、ツルを伸ばすという「体づくり」に専念します。この体づくりが十分ではない状態で無理に雌花を咲かせても、実を育てるスタミナがないため、植物自身がコントロールして雌花をつけるのを待っている状態なんです。

焦って肥料をドバドバあげたり、花を咲かせるスプレーをかけたりする必要はありません。毎日のお世話を淡々と続け、株全体の草丈が大きくなり、葉の枚数が増えて体力がついてくると、ある日突然、節の根元に小さな小さなきゅうりの赤ちゃん(雌花のつぼみ)がついているのを発見できるはずです。その日を信じて、日々の水やりと適度な追肥でサポートしてあげてください。

まとめ:

きゅうりは素直な植物。日光、水、観察という環境を整えることで必ず花を咲かせてくれるという応援メッセージ

さて、きゅうりの花が咲かない原因とその対策について、植物のメカニズムを交えながらかなり詳しく解説してきました。情報がたくさんあって迷ってしまったかもしれませんが、一番大切なポイントを絞ると、以下の3つに集約されます。

  • 日当たりと風通しを見直す(光合成不足は花芽作りの最大の敵!)
  • 水切れを絶対に防ぎ、夏場は朝夕の涼しい時間にたっぷり水やりをする
  • 窒素過多(つるボケ)に注意し、品種に合わせて適切なタイミングで摘心を行う

きゅうりという野菜は、成長スピードが早いがゆえに、環境の良し悪しがすぐに葉っぱや花のダイレクトな反応として現れる、とても素直な植物です。花が咲かない時は、必ず「光が足りないよ」「喉が渇いたよ」「栄養のバランスがおかしいよ」という何らかのサインを出しています。

焦って難しいことをする必要はありません。まずは株全体をよく観察し、この記事でお伝えした今日からできる対策を、できそうなものから一つずつ試してみてください。環境を少し整えてあげるだけで、きゅうりは数日後には嘘のように機嫌を直して、可愛い黄色の花をたくさん咲かせてくれることがよくあります。あなたが手塩にかけて育てたきゅうりから、美味しくてみずみずしい実がたくさん収穫できる日を、心から応援しています!

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